ウィリアム・J・ヒギソン(俳号:緋庵)

日本語訳 橋本圭好子

プロフィール

1938年、ニューヨークに生れた。ニューヨークと北ニュージャージー州で育つたが、両親の故郷の、コネチカット州のミドルタウンとも、祖父母たちの所で夏を過ごすなど、強い絆を持っていた。マサチューセッツ工科大学に通 い、イェール大学で日本語を学び、1960年代初め、青森県三沢のアメリカ空軍基地に勤務した。1960年代、1970年代には、ハイクで数々の賞を取り、『ハイク・マガジン』Haiku Magazineの編集長を務めた。今日では、『俳句入門』The Haiku Handbook,『俳句の四季』The Haiku Seasons、『国際俳句歳時記』Haiku Worldの著者として知られている。

アメリカ・ハイク協会の元会長で、愛媛県主催の、正岡子規国際俳句賞の、選考委員会の委員である。妻の、詩人であるペニー・ハーターとニューメキシコのサンタフェで10年余を暮らし、現在はニュージャージーのサミットに住んでいる。

代表句

wet snow——
another color or two
on the sycamore boughs
ベタ雪
一つか二つ色が増えた
鈴懸の枝に

雪とけて鈴懸の枝色まだら(吉村侑久代訳)

bend after bend
hill after hill folds into
Mogamigawa
つゞら折
山並折り重なって
最上川へ

山襞を入れつづら折れ最上川(加藤耕子訳)

holding the water,
held by it——
the dark mud.
水を保ち
水に保たれている
黒ずんだ泥

水を持ち水に持たれる暗い泥(佐藤紘彰訳)

from the sandy beach
I stumble into the dark
path fireflies
砂丘から
私は闇へ踏み込む
ほの暗く蛍の飛ぶ径へ

浜辺から蛍の闇に踏み込みぬ(近藤蕉肝訳)

Good Friday
just out of tree shadow
the white hyacinth
受難日
木の陰から出たばかりの
白風信子

受難日や木陰出て白き風信子(近藤蕉肝訳)