コー・ヴァン・デン・フーヴェル

日本語訳 橋本圭好子

プロフィール

コー・ヴァン・デン・フーヴェルは、ニューイングランドで生れ育った。1958年にサンフランシスコのノースビーチの詩の朗読会でゲイリイ・シュナイダーが俳句に就いて話すのを聞いて初めて俳句を知り、それから句を作り続けて来た。1959年の始めに東海岸に戻り、メイン州の小さな小屋で作句をした。1959年秋ボストンに移り、ビート族がよく集るビート喫茶店でジャズの伴奏のもと、俳句や詩の朗読者として働いた。

1960から61年の冬迄に、ニューヨーク市の10町目喫茶店で詩朗読の場面で活躍した。1971年にアメリカ・ハイク協会に参加して、1978年には会長となった。アメリカ・ハイク協会は3つのメリット・ブック賞を俳句に対してくれた。10冊の小句集を出した ― 最近出したのは『野球』(レッド・ムーン・プレス、1999)と言う野球俳句のものである。また今3冊目となる『ハイク・アンソロジー』の編集者でもある。

ヴァン・デン・フーヴェルは1999年、松山での国際俳句シンポジウムに於てアメリカ合衆国の代表を務めた。2000年のロンドンとオックスフォードでの世界俳句祭典で世界俳句栄誉賞を受けた。2002年に松山で正岡子規国際俳句賞を受賞した。

代表5句

summer afternoon
the long fly ball to center field
takes its time
夏の午後
長いフライのボールがセンターフィールドに
ゆっくりと

夏の午後センターフライゆっくりと

a tide pool
in a calm shell
the evening sunlight
引き潮の後の水溜が
貝殻に
夕日影

貝殻に残る引き潮夕日影

the sun goes down
my shovel strikes a spark
from the dark earth
日が沈む
私のシャベルが火花を散らす
暗い土の中から

夕暮れのシャベルの火花土に散る

November evening
the wind from a passing truck
ripples a roadside puddle
11月の夕べ
過ぎ去るトラックの風が
道端の水溜りにさざ波を立てる

冬の暮トラックに震える水溜

deep snow
the amusement park lit
by a single bulb
深雪
灯る遊園地
唯一つの電球で

雪深し明り一つの遊園地

>名句選 (コー・ヴァン・デン・フーヴェル)