「俳句・ハイク」名句選

名句選

自句選

「愛好句」鷹羽狩行抄出

啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 水原秋桜子(1892-1981)*
滝の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半(1895-1976)
美しき緑走れり夏料理 星野立子(1903-1984)
翅わつててんたう虫の飛びいづる 高野素十(1893-1976)
木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ 加藤楸邨(1905-1993)
ちるさくら海青ければ海へちる 高屋窓秋(1910-1999)

短評:啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 水原秋桜子

 群馬県赤城山での作。啄木鳥は、嘴で木を掘っては虫を取り出して食べる。その静かな音に耳をかたむけていると、牧場の木々は早くも落葉しはじめていた。麓よりも一足早く訪れる高原牧場の晩秋風景を描く。

 しかも、従来の水墨画風の俳句とは違って、印象派風の油彩画を思わせるもので、これは画期的な作品であった。明るい外光のもとに展開する大自然に対して、西洋的な芸術家の眼で接したのが秋桜子である。